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QOLとそれぞれのかかわり

私の話は私の同僚と私が数年の研究と臨床実験から学んだものを土台としています。それは役に立たない答えであり、間違った方向に導く答えかもしれません。総論は私たちが判断し、決断し、行動を起こすことが求められる特殊な状況の中ではあまり役に立ちません。このことは、みなさまが教科書を下に置き、医療提供者としての自分の責任と役割を果たそうとするときにわかったはずです。同じ患者は2人といないのです。同じ状況は二つとありません。ただ、私たちは自分の知識に確信をもちはじめるときにのみ、新しい問題や状況に立ち向かうことができるのです。
たとえば今日、アメリカでは、看護婦と医師は、数年前まで直面しなくてもよかった議論のある法律的・道徳的な問題、経済的なプレッシャー、非安全さの問題を取り扱わなければなりません。医療提供者と患者間の基本的な関係に影響を受け、そして私はどうしても言わなければならないのですが、広範囲な社会的・経済的な変化によって脅威を受けています。多くの善意ある看護婦や医師は、自分たちが患者に与えたいケアをすることが困難であると感じています。治療の順序、直面する医療状況の種類、そして家族とコミュニティーの姿勢の大きな変化があります。
この話のあとに、私たちは高齢者と末期患者のQOLに関わる変化の一部について考えてみたいと思います。いま私が提案するのは、確かな答えを主張するのではなく、探求のプロセスに焦点を合わせることです。私たちは有用な質問をどのような状況でもすることができます。もし、私たちが心を開き、忍耐し、そして観察する能力をもつなら、特殊な状況の中で特殊な人々のためにそれに合う答えを見出すことができます。
そこで、話はいくつかの質問を土台としてなされます。つまり、人生の意義に関する基本的な質問から高齢者の人々に至るまでです。
どこから始めましょうか。おそらく私たちはその始まりを見出すことから始めなければなりません。QOLはひとつの理念であり、ひとつの構成されたものです。この理念は、どこからきているのでしょうか。別の言葉でいうなら、私たちはいつ、そしてどのように成人期のQOLについての理念を形成するのでしょうか。これはこの質問にアプローチするのを助けるかもしれません。

 

老いを拒否する

そんなに以前のことではありませんが、私はある夫妻にお会いし、彼らの知性、世界への知識の豊富さ、また献身などとても大きな印象を受けました。
ご主人はアメリカ合衆国の南部の大学の教授です。彼は退職する年齢で、まだ自分の仕事に喜びをもち、新しいプロジェクトも計画しています。奥さんはその大学で責任のある地位にあり、広い範囲で学んでいる人で、多才の人であります。彼女は50代半ばで、健康で、エネルギッシュです。
ある午後、この女性と私は、暖かい朝に一緒に小さな湖の回りを散歩していました。私たちが湖畔に沿って散歩しているある高齢の夫婦に気づいたとき、彼女は私に自分のいろいろな出来事についてのいくつかの思い出を語っていました。「私は、決して年寄りにはなりません」と私に話しました。「私は決して私にそのようなことは起こさせません」と。
それで彼女は自分のプランを打ち明けてくれました。彼女の夫は心臓に問題を抱え、1〜2年以上は生きられない状態です。彼女は夫の側にいて自分のできるすべてをする決意です。夫が死ぬとき、彼女は自分の身の回りを整理し、アイスラン

 

 

 

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